【小浜逸郎】「新」国家改造法案



安倍政権になってから、というと、まるで安倍さんだけが悪いように聞こえたり、民主党政権時代のほうがましだった、といっているように聞こえますので、どこを節目にしたらよいのか困るのですが、ともかく、この数年、日本の政治はひたすら亡国を目指しているように思います。

事態はかなり絶望的です。

◆経済政策。
1.「国の借金1000兆円」のウソによる緊縮財政の正当化→積極財政が抑制される。投資が減退する。デフレ不況の悪循環が続く。
2.消費増税→実質賃金が低下し、個人消費が下落する。投資が減退し、貧困層が拡大する(エンゲル係数の急騰)。富裕層、公務員らへのルサンチマンが高まる。
3.外国人労働者(移民)拡大・規制緩和政策→賃金低下競争が激化し、労働の質が低下する。中国人の経済侵略が進み、技術が流出する。文化摩擦が拡大し治安が悪化する。内部から安全保障が脅かされる。
4.公共投資の抑制→交通インフラの整備の遅れにより東京一極集中が強まり、地方がますます疲弊する。各種インフラの劣化が放置される。大災害のリスクに対応できない。
5.電力固定価格買取制度(FIT)→利益本位の未整備業者が続出する。電気料金の値上げ。再生可能エネルギー増大の困難がいっそう印象づけられる。
6.農協改革→株式会社や外資の自由参入を許す。土地利用の勝手な転換。日本農家が壊滅的な打撃を受ける。
7.労働者派遣法改悪→非正規社員比率が増大し、若者の生活難、結婚難が深まる
8.年金改革法→高齢者の生活難が深まる。現役世代の不安が増大する。
9.カジノ法案国会通過→経済政策の失敗が糊塗される。外資が乱入する、低所得層の生活が乱れ、社会秩序が混乱する。
10.TPP批准→アメリカの撤退によって無意味化し、対米二国間交渉がかえって難航する。アメリカの要求への屈従が強まる。
11.水道事業の民営化閣議決定→水道料値上げ、リスク管理の不安が高まる。

◆外交・安全保障政策。
1.尖閣問題への無策→中国の対日侵略意図が増長する。
2.慰安婦問題、南京事件問題への無策→中韓の反日政策を助長する。有力国間での日本のイメージダウン。
3.対プーチン外交→四島返還の不可能が確定的となる。ロシアペースでの「経済協力」が推進される。
4.対トランプ外交→対米依存姿勢が再び露呈し、自主防衛能力のなさを印象づける。
5.南シナ海問題への無策→日本の資源獲得の根幹が揺らぐ。日本に対する東南アジア諸国の信頼が失われる。
6.防衛予算不拡大→中国との格差が拡大し、日本はますます軍事的脅威にさらされる。
7.不動産に対する外資規制の欠落→中国による領土の現実的支配が進む(特に北海道)。

これらは、もうほとんど実際に結果として現れています。
しかもこれらは、はっきり言って、すべて国民を苦しめるだけの「悪政」であり、「バカ政」です。
数少ない心ある人たちは、もちろん日本が直面しているこの危機(というよりも政府が自ら招いた自殺行為)に気づいており、早くから政策の誤りや無策の落とし穴を指摘してきました。
政治がなぜこういう過ちを犯すのかについてもさまざまに説かれています。処方箋も出されています。
つまり警鐘はもう十分鳴らされてきたのです(もちろんこれからも鳴らし続ける必要はありますが)。

ところが、です。
事態はいっこうに変わる気配を見せません。

なぜなのでしょう。
いろいろと原因を挙げることができますが、あまり詳しい原因分析をしても仕方がありません。
要するに権力者が、物事を総合的に考える能力と、国民のために尽くす意志を失っているのです。だから「悪政」や「バカ政」がはびこるのです。

それには理由があります。
主権者である国民を代表するはずの代議員による政治が行われておらず、真の権力者が別にいるからです。真の権力者とは、オタク化した官僚であり、御用学者であり、「民間議員」と称する内閣傘下の各種会議委員であり、アメリカの圧力であり、彼らの言うことをそのまま垂れ流しているマスコミです。

ではどうすればこの「悪政」あるいは「バカ政」を少しでも修正できるのか。
二つの条件が必要です。

一つは、自ら権力を獲ること。

もう一つは、権力に強い影響を与えること。

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一つ目は、たいへん難しい。社会の仕組みが複雑になっていて利害関心が個人化し、多くの同意を勝ち取ることが困難だからです。でも何かうまい手を考える必要があるでしょう。
二つ目は、言論を続けることも有力な手ですが、それだけでは不足です。みんながそれぞれの「信仰」に染まっていて、聞く耳を持たないからです。学者・知識人たちも自分を批判する議論から逃げていますね。テレビ討論などはみなその場限りです。これについても新手を考える必要があります。

これから、二つの条件を満たすために三つのアイデアを提示します。これらはさしあたり「夢物語」です。でも実力と気力ある賛同者が増えれば実現に向かって二歩も三歩も踏み出すことができます。

一つ目。「超教育論」

年少の青年子女を育成するのではありません。官僚の既定路線を変えるために、新しく官僚になった人たちを二年間くらい、庶民の生きている現場に出向させ、そこで働いてもらうのです。財務省の役人は中小企業や商品市場に、経産省の役人は町工場に、国交省の役人は地方の過疎地域に、文科省の役人は小中学校に、というように。
一部で試みられているようですが、はなはだ不十分です。制度として徹底させる必要があるでしょう。これは、庶民の生活実態を肌で知ってもらい、そこで常に一般国民の幸せについて考える想像力・構想力を養ってもらうためです。

二つ目。「超シンクタンク論」

日本の民間シンクタンクは個別企業の利害に奉仕するだけか、公共政策に関与している場合でも、単発・シングルイシューで終わっているケースがほとんどで、権力との恒常的な連携があまり保たれていません。横の連携が必要です。
経世済民の志をもった優れた人々が結束して、日本の政治経済の総合的なヴィジョンを打ち出せるような統合組織を作るのです。これは時の政権のアド・ホックなあり方を超越していなくてはなりません。そのためにはオーソリティとして認められる必要がありますね。

また、単に議論をしたり調査をしたり報告書を出したりするだけではなく、広く大衆に存在意義を知ってもらうために、映画などの文化事業と有機的に連携する必要があります。

三つ目。「超選挙制度改革論」

選挙制度改革というと、一票の格差がどうの、区割りがどうの、すべて比例代表制にしろだの、中選挙区制に戻せだのと、表面的・形式的な議論にとどまっていて、真に優れた政治家が選ばれるようにするにはどうしたらよいかという問いが欠落しています。

私のアイデアは、有権者と立候補者それぞれにテストを課して、参政権保持者をある程度まで絞るというものです。有権者には、健康な常識人ならまあだいたいが合格できるような易しいテストを課します。ただし、高得点者には複数投票権を与えるような「差別的」な選挙も視野に入れるべきでしょう。

また立候補者のテストは政治的見識を問う難しいものにします。ただしイデオロギー色があってはなりません。
これは、悪平等主義の弊害や組織ぐるみの半強制的な動員やポピュリズム政治を避けるためです。形の上だけの公正さは、真の公正さではありません。

そんなことができるわけがない、と思った方も多いでしょう。猫に鈴をつけるのは誰だ、金と力は誰が提供するのだ、どうやってコンセンサスを勝ち取るのだ、と。

なるほどこの提案自体が言論の無力を示していると考えることもできますね。日本には寄付文化もありませんからね。
でも、絶えず具体的な政権批判を繰り広げる一方で、これくらいのことを理念として掲げるのでななければ、今の日本の絶望的な政治状況に対するあきらめとニヒリズムが残るだけです。

何しろ、これだけ東アジアの安全保障が脅かされていながら、防衛予算の増加には75%が反対するお国柄です。政策レベルで安倍政権を対等に批判できる健全野党は存在せず、国会はやるべきことをやらず、くだらない足の引っ張り合いで時間と税金を空費しています。日本国民の大方は、GHQや財務省がかけたマインドコントロールにいまだに呪縛されている始末です。

危機をしっかり見つめている覚めた人たちの結束を促すべく、また少しでも意気に感じてくれる有力者が現われることを願いつつこれを書きました。

引用:https://38news.jp/politics/10204

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