不妊症専門クリニックがホームページなどで発表している『妊娠率』の高さには素晴らしいものがあります。しかし不妊症患者さんの一番の目標は「妊娠すること」ではなく『出産すること』です。

実際のところ不妊治療の専門病院で『生児出産率』まで発表しているところはめったになく、そもそも不妊症専門施設では分娩設備がある所が少ないため、その数値を把握できていないからだと思われます。残念ながら『妊娠率と出産率は違う』というのが現状です。

受精、着床がうまくいってもそこから「妊娠を継続する」というのが、また一つの試練なのです。

実際に胎嚢を確認できた後でも、ストレスや体力低下、不規則な日常生活などが原因で、血流が悪くなったり体の冷えが増悪してしまうことで残念ながら流産してしまうケースも多くみられます。

2007年のデータによると、体外受精の胚移植あたりの平均妊娠率は26.4%(顕微授精を除く)、顕微授精(ICSI)の場合は22.0%。無事出産まで至った確率は体外受精16.2%、顕微授精13.2%でした(いずれも胚移植あたりの割合)。本来は着床する予定がなかった受精卵を人の手で着床させる体外受精は、自然妊娠に比べるとどうしても流産の確率が高くなってしまいますが、そもそも不妊治療とは受精卵が無事着床し、妊娠が安定して産科に引き継ぐまでを指すものであり、病院を選ぶ際には妊娠率だけでなく、こうした点も十分考慮する必要があります。

妊娠の確率は女性の年齢にも大きく左右され、30代前半までの体外受精による妊娠率が2~3割であるのに対して、30代後半は2割、40歳では1割に低下するといわれています。

出典

日本産婦人科学会「平成20年度倫理委員会 登録・調査小委員会報告(2007年分の体外受精・胚移植等の臨床実施成績および2009年7月における登録施設名)」(2009年9月)