お金って何だろう? 第五回


世界の近代史の政治的分野における巨人でもあるジョン・ロック。名誉革命の思想的バックボーンでもあり、アメリカの独立宣言にも大きな影響を及ぼしている人物です。フランスの人権宣言への影響も大きい。政治学的には立派な人だし、業績も大きい。けれども、何でも優秀な人はほとんどおらず、御多分に漏れず、ジョン・ロックも、経済学の分野では、とても変な人で、「銀貨に書かれている数字と硬貨の重さは一致しなければならない。1ポンドの銀貨には1ポンド相当の銀が使われていなければならない。」と言い出しました。

端(はな)からおかしくて、金や銀の価格は一定ではなく、産出量によって変動しますが。何でそんなものを基準にするのか、わからないところではありますが。

その上、ジョン・ロックには、イギリスの政界において、もの凄い権力があり、ジョン・ロックがそういう事を言い出したため、英国政府は、全国民から金貨を回収して、削られまくっていた銀貨を、額面に見合う銀の重さで鋳造し直して、全国民に返還したところ、英国内の銀貨の流通量が三分の二になってしまいました。それで超デフレーションになってしまいました。

結局は金属の価値に重きを置いたことがジョン・ロックの誤りであり、そもそもお金の担保として、それに見合うだけの貴金属がなければならない、としていた金本位制がこれからニクソン・ショックが起こるまで続けられていった現実を見ていても、人間は賢くないのかな、と思う事件でもあります。貴金属は掘り尽くされたら終わりになるので、人口が急激に増えた時などは大変なことになります。

例えば、モンゴル帝国が南宋を滅ぼした時には、急激に人口が増えて大変になった事がありました。当時、モンゴルでは銀本位制が採られていて、お金を発行しようとしても出来ません。いきなり、銀の採掘が出来る訳ではないですから。最初は頑張って通貨を発行していたのですが、デフレになってしまいました。それで世界初の不換紙幣が生まれます。

金属とお金を結びつける発想が政策を歪めてしまう、という事を、人間は何百年も繰り広げている訳ですが、こういう政策のために、経済学が現実性をなくし、理論のための理論になってしまった所以(ゆえん)でもあります。

何が言いたいかと言えば、究極的には、お金というものは、「誰かの資産であり、誰かの負債である」という事です。
買い物などは、誰かに負っている債務を、誰かに持っている債権で弁済する、という事です。

これが「お金」の本質です。

ちょっと難しくなってしまいましたが、お分かりでしょうか?

何度も繰り返して見られると、よくお分かりになると思います。

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