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唐辛子も前回の枸杞と同じくナス科の植物。
お仲間にはピーマン、シシトウ、パプリカなどもありますが、唐辛子は辛味の強い香辛料、
野菜で、トウガラシ属だけでもさまざまな品種があります。

名前が表すように「唐」の「カラシ」だから中国産かと思いきや、原産地は中南米です。
メキシコあたり、と言われています。
日本には16世紀頃に伝わってきたようです。
最初は「南蛮胡椒」として観賞用だったそうです。
九州のほうでは今でも「胡椒(こしょう)」と呼ぶんですよね。
「柚子胡椒」の胡椒は唐辛子のことですね!

世界中で使われている香辛料ですが、ヨーロッパに初めて伝えたのはコロンブス、
その後ポルトガル人が植民地ブラジルから持ち帰った後広まったので、比較的新しいです。
今では世界各地で500種以上もの唐辛子が栽培されており、
各国・地域のお料理には無くてはならない存在になっていますね。
元祖メキシコのパラペーニョやハバネロ、米国のタバスコ、イタリアのペペロンチーノ、
ハンガリーのパプリカ(辛くありませんが)、タイのプリッキーヌーなどが有名ですし、
インドを始めとした南アジア、中国、韓国でも、そしてアフリカ諸国でも欠かすことができません。
日本では「鷹の爪」、七味唐辛子、沖縄のコーレーグースなどでお馴染みです。
野菜としては京都の万願寺とうがらしなどの甘唐辛子もあります。

中国では蕃椒(ばんしょう)という生薬名がついていて漢方薬でも使われていますよ。
健胃、発汗、外用薬として凍瘡・凍傷の治療、しもやけの予防などの効能があります。
唐辛子の辛味成分はカプサイシンといって、慣れない人は食べると「痛い」と感じるほどです。
昨今の激辛ブームで鍛えられた人はいざ知らず、伝統的な和食に慣れた舌には刺激が
強すぎるかもしれません。
インドでは子どもでも辛いカレーを平気で食べていますが、これはかなり小さい頃から
訓練しているからです。
日本では子どもの頃は「○の王子様」カレーですので、慣れることができず、苦手な人が
多いですね。
というのも、南アジアや中央アメリカなどでは暑さのために発汗作用を促すことが大事に
なってくるんですね。
発汗すると体温が下がりますので。
殺菌力があるので、食べ物の腐敗を防ぐ効果もあるようです。
でも、韓国はどうなの? 世界で一番辛い料理と言われるブータンではどうなの?
となると、やっぱり気候だけではなく、文化的な要因もあるのだろうと言われています。

カプサイシンというのがトウガラシの辛味成分です。
脂溶性があり、アルコールにも溶けやすい性質があります。
ペペロンチーニのような使い方やコーレーグースは理にかなっているわけですね。
体内に入ると、灼熱感を引き起こし、痛覚神経を刺激します。
舌にある味覚ではなく、痛覚で感じ取るのですね。
その後脳で「辛味」を認識します。
また脳に運ばれるとアドレナリン分泌を活発化させ、それによって発汗するわけです。
激辛料理を食べて「痛い、痛い」と大汗をかくのはこういった機序によるものです。
トウガラシを触った手で目を触ると涙が止まらなくなったり、
粉末を吸い込むと激しく咳き込んだりしますので、注意が必要です。

それでは、漢方的に見ていきましょう。
性質は熱、昇、燥作用があります。
臓腑では心、脾に入ります。

東洋医学的な効能としては、
温中散寒、つまり胃腸の冷えを温めて冷えを取り除きます。
開胃消食、つまり食欲を増進し、消化を助けます。

熱性ですので、冷え症の方にはよいのですが、
体内に熱がこもりやすいタイプの方や陰虚体質の方には不向きです。
気の滞りやすい、血行が悪いタイプの方にもよいでしょう。
身体のどこかに炎症がある方は避けたほうがいいですね。
扁桃腺が腫れていたり、膀胱炎や痔のある方はやめてくださいね。

過剰摂取すると胃壁を荒らしますが、ちょっと使うとその刺激が食欲増進に働き、
エネルギー代謝を促進し、毛細血管を収縮させるので血流がよくなる、
といったメリットがあります。

香辛料ですので、主菜にはなりませんが、毎日のお料理にメリハリをつけるのに
上手に使っていけるといいですね。

ペペロンチーニはスパゲティだけではありませんよ。
お野菜を炒めるときにちょっと一手間。
きのこやレンコン、ゴボウなど、これからの季節でも楽しめます。
鷹の爪とにんにくスライスをオリーブオイルでじっくり熱して香りと辛味を移し、
野菜を炒めるのです。あとは塩味で。
おいしいですよ!

野菜のアクを止める働きがあるので、タケノコをゆでるときには米のとぎ汁に
トウガラシを入れますね。ナスの煮物にもいいですね。
食用以外には防虫効果もあり、昔は米びつに鷹の爪を入れたものですが、
最近ではトウガラシを使った専用の製品が出ていますね。

辛いものが苦手な方にお教えしますと、辛味成分が一番多いのはトウガラシの中の
種がつく「胎座」といわれる部分です。
ちなみに種は辛くありません。
ですので、粉末になったものより、鷹の爪の中身を開いて、種ごときれいに取り除いて
果皮だけにして使用するといいですね!

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